チーズ農家のチーズ考 2016

ヤギ山通信 その146より・・
「チーズ農家のチーズ考 2016」
~この土地のチーズを造る~としてまとめてみました。
長いですが、読んでみてください。

~ この土地のチーズを造る ~   山田農場 山田圭介・あゆみ

日本の酪農やチーズ造りと向き合って20年、2006年より、山を開墾し、この土地の風土を反映したチーズの形を求めて10年が経ちました。本物のこの土地のチーズを造りたい、この土地の循環の中に活きるチーズ造りがしたいということが、絶対的な存在感で自分の体の中に染みついた10年間でした。

ヨーロッパなどで培われてきた乳利用の牧畜文化の歴史は約4000年、日本でも100年以上のチーズの歴史が流れてきましたが、その流れを見ても、本質的な文化が伝わったかどうかは、ずっと疑問に感じていました。その疑問を一つ一つ紐解くうち、本当の土地のチーズを造らなければ、文化として次世代に残せないと思うようになりました。

これから書くことは、4000年のチーズの歴史がどうして続いたのかという、とてもシンプルな答えに辿り着くための、自分たちなりの解釈と試みであり、日本の100年というチーズの歴史を紐解いて辿り着いた結果です。
長いけど、読んでください。
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① 自給的な酪農とは?
今、日本の酪農の本当の自給率はどれくらいでしょうか。
輸入穀物(配合飼料)をほとんどの酪農家(畜産農家)が利用していますが、何世代にも渡って改良された乳牛と輸入穀物はセットになっています。乳量はもちろん、乳成分や、牛たちの生命維持するのには欠かせないというマニュアルと共に、日本酪農の文化に深く刷り込まれています。また、国や乳業メーカーのミルクの基準も、これに基づいているのだから、与えないと基準をクリアしづらいのです。そして、その穀物には、大量の添加物やポストハーベストが含まれ、GM、Non-GM表記に関わらず、GM作物が使用されています。(Non-GM表記でも、5%までの混入は認められています)

輸入穀物、または輸入飼料に依存した農業は、本当に農(みのり)の業(なりわい)と言えるのでしょうか。きっと農家さんの中には、疑問を感じながら、また葛藤を感じながらミルクを出荷している人もいると思うのです。でも、農協や乳業メーカーに出荷する以上、このシステムからは逃れられないし、完全なアウトサイドで商売するしかないのです。

山田農場では、輸入穀物は一切与えていません。
飼料としては、春~秋までは放牧するため、在来種の植生が主体の放牧草。冬は隣町の乾草。これに通年で米(北斗市)、大豆(道産)、小麦(道産)、サンゴ粉末(沖縄)を与え、時季によっては、地元の米ぬか、野菜くずなどを与えています。農業とは、その土地にあるもので成り立っていたのが本来の姿だったのではと思います。今の日本の農業は、「自給的な事(持続可能な事)」、「種を守る事」からはかけ離れてしまいました。「食べるものを作る」ということが本当はどういうことなのか・・私たち生産者が改めて土俵に上げないといけない問題です。

私たちはいつも、チーズ造りのための酪農を追い求めてきました。より自分たちらしいチーズ造りとは何か、そのためにはどんなミルクを求めていくのか、どう環境を良くしていったらいいのか・・。
「チーズのための酪農」、それを求める酪農家は日本では数少ない。次項からの話も、まさにその答えなのです。
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(動物用の米・大豆・小麦は、毎日このかまどで煮てからあげます)

② 土地の乳酸菌でチーズを造る
その土地にあるもので成り立つ農業により、初めて土地ならではの個性や独自性が生まれてきます。それを次世代へ未来へと引き継ぎ、チーズは4000年の歴史を繋いでいくことができたのでしょう。その歴史の中で、ほとんどのチーズは殺菌しない生乳(なまにゅう)を利用して造られてきました。生乳でチーズを造るということは、土地の乳酸菌や酵母を利用するということです。

しかし今の日本のチーズ造りにおいては、生乳はタブーとされているため、ミルクは殺菌し、フランス又は海外の人造培養乳酸菌を添加して行うのが一般的です。
(※人造培養乳酸菌:今の科学においてのみ、人間が勝手に有用と判断された菌をピックアップして培養したもの。ゴーダ用、カマンベール用、などなど・・さまざまなチーズに合わせて乳酸菌や酵母がミックスされて販売している。)

タブーとされつつも、生乳で造られた海外のチーズは普通に輸入され、消費されています。それは本当にタブーなのでしょうか?ずっとずっと疑問でしたが、色々と掘り下げて調べ、やっと答えに辿り着きました。法律上において、ミルクを殺菌しなければならないという法規制はないことがわかりました。(厚労省と保健所にも確認しました。ただ、殺菌を指導するという対象には変わらないということでした)

農場でミルクを搾り、チーズをすぐに造ることができる環境において(農家製チーズ)、ミルクを殺菌すること、輸入もしくは国産でも人造培養乳酸菌を使用することだけが正しい方法なのかどうか、ずっと疑問に思っていました。ミルクを殺菌することで、有用な菌も死に、時間と共に雑菌が侵入しやすくなるリスクも同時に負います。

日本の殺菌に対する基準は、大量のミルクを集乳し加工する大工場などを前提として定められていて、ナチュラルチーズの原料としての基準は、生菌数400万個/ml以下。山田農場では0.1~1万個/mlです。このミルクを衛生的に管理された環境で搾乳後すぐにチーズにするのであれば、雑菌はほとんど繁殖することができないはずです。

それから、私たちがいつも大切に思っているのは、「食べるものを作る」ことへの責任です。人造培養乳酸菌を長年使い続けた場合、環境や人体への影響はまだわかっていない。そしてもちろん、それらは古来の技術にはなかったものです。チーズ4000年の歴史が教えてくれる微生物たちの働きを、もう一度学び直し、その土地に自生する乳酸菌だけでチーズを造る技術を体得しなければ、文化としては繋がっていけないのではないかと思います。

天然酵母のパン(自家培養の酵母)、自然派ワイン(野生酵母)、自然酒(生酛造り)・・もっと身近で言えば、家庭で作る味噌・漬物など。多くの発酵食品に自生乳酸菌は利用され、私たちの暮らしの側にあります。自分で作った味噌を食べてホッとすることありませんか?自生乳酸菌は、環境にも自分の体にも、いつもくっついている大切な「循環の中に活きているもの」なのです。それを利用し、チーズを造る。それが活きたチーズ造りであり、「食べるものを作る」自分たちの責任だと確信し、今日に至ったというわけです。
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③ 山田農場製 ガロのチーズ
山田農場では、今シーズンから生乳+自生乳酸菌を使ってチーズを造ります。(日本では、生乳+自生乳酸菌のチーズを製造・販売している事例がほとんどありません。)

自生乳酸菌の場合、季節によって様々に変化していきます。もちろんチーズの種類も味わいも、変わっていくのが自然と考えます。10年間研究を続けてきましたが、日本でのマニュアルがないため、土地の菌と付き合いながら、また古来の技術と知識に頼りながら、自分たちのチーズを積み重ねていこうと思っています。

山田農場製「ガロのチーズ」は製造時以外、あまりエネルギーを使いません。扇風機、除湿器、冷蔵庫などは、ほとんど必要とせず、熟成庫で季節の温度変化を感じながら熟成していきます。
先述のように、搾乳後すぐにチーズに加工する農家製チーズの場合、衛生的に管理された環境にあれば、実はとてもリスクを低く抑えることが可能です(どの食品にも当てはまる事です)。これ以外に、更にリスクを減らす、もしくは管理するために、自主検査(菌や乳成分)を定期的に行い、食品衛生管理基準のHACCEPに取り組みながらチーズを製造します。

それともう一つ、生乳を使ったナチュラルチーズの注意点として・・ヨーロッパでの一般的な知識では、乳児・妊婦・高齢者などの免疫力が低いと思われる人の食用を控えるということが広く知られているようです。それを受け、山田農場でも同じように考え、アルコール飲用に制限があるように、チーズも控えることが大事な場合もあるということをお伝えしていきます。
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④ 古い文化とともに進化していく。
私たちは、100年先まで繋がるくらしをいつも想い、できるだけ食べるものを自給し、できるだけエネルギーを使わず、できるだけ外から持ち込まず、この土地で循環しながら生きていきたいと思っています。その暮らしの一部がチーズ造りであり、チーズも活きて循環していくのだと思うのです。

4000年のチーズの歴史を想いながら、その古くからの文化とともに、この土地の新しい文化に進化させていく。それが自分たちの揺るぎない言葉になり、誇りを持てる本物の土地のチーズになると信じて、今日もチーズを造ります。
(長文おつきあい、ありがとうございました)
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※文中の写真は、カメラマン工藤了さん撮影です

ヤギ山通信 その146 チーズ農家のチーズ考 2016

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農場開拓より10年が経ちました。
今年より、更なるリニューアルとお伝えしてきましたが、
新しい決心とともに、改めてチーズに向き合うことにし、
それをきちんとお伝えすべく、言葉にすることにしました。

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時間がかかってしまいましたが、今まで積み重ねてきたものを
形にし、言葉にすることはとても難しいことでした。
ケイスケは18歳でチーズの世界に入り、20年。
アユミは23歳で酪農の道に進み、20年。
この20年、向き合ってきたこと、感じたこと、
そして山田農場で、チーズ農家として改めて想うことをまとめてみました。
日本のチーズ造りってなんだろう・・から、
これからの生き方まで・・。

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でもきっと、これは不都合な真実かもしれない。
人を批判したり、差別したり、することになるかもしれない。
あえて土俵に乗せてこなかった問題を、私たちが問題提起するのは
おこがましいかもしれない。

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「山田さんだから出来たんだよ」
「理想でしょう、それは」

・・そうかもしれない。いや、そんなことはない。

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マニアック、ストイック、原理主義・・その言葉はよく言われます。
でも、本当にそうだろうか?
これが普通になったら、面白くない?

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そう、本当の面白さはそこにあるんです。きっとね。

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こうであるべきだと教わってきたことを、
一度ぶち壊したとき、見えてくる誠実な答え。
それは壊したものにしか見えてこないし、
壊すと、まず最初は誰かに怒られる。
でも、めちゃくちゃに一生懸命やるしかないときは、
壊しても進む。進まないと、自分でなくなる。

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そうやって見えてきたものがこの
「チーズ農家のチーズ考 2016」です。
日本で一番小さいチーズ工房、チーズ農家からの発信です。
少し長いけど、読んでみてください。

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カテゴリー「チーズ農家のチーズ考」にまとめました。

また新たな気持ちでチーズ造りに向かいます。

★写真は、カメラマンの工藤了さん撮影です。ありがとうございます。
山田農場について

山田農場

Author:山田農場
2006年から農場を開墾し、畜舎・住宅・チーズ工房などを自分たちで建てて、2008年からチーズの販売を始めました。山羊・ヒツジを放牧と地元で獲れる作物で育て、なるべく自然な飼い方で、なるべく自然なチーズ作りをしています。季節を感じ、土地の個性を感じるチーズを楽しんでいただけたら嬉しいです。また、自給自足が目標で、お金のかからない、できるだけエネルギーを使わない暮らしを目指しています。
カテゴリーにあるお店の紹介にはアクセス・営業時間など、チーズの紹介にはチーズの種類と価格など、ヤギ山通信には農場の日記を載せていますので、ご覧いただき、お問い合わせは電話・Fax・メールでお願い致します。

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